リウマチ治療

リウマチによる手足の変形~その予防と手術療法~

藤川 陽祐
こつ・かんせつ・
リウマチセンター長
藤川 陽祐
専門分野 整形外科 リウマチ関節外科 骨代謝
資格等 ・日本整形外科学会専門医
・日本リウマチ学会指導医
・日本リウマチ財団登録医
経歴 大分大学医学部整形外科学講座准教授・付属病院臨床教授を経て、平成21年7月1日より当院こつ・かんせつ・リウマチセンター長に就任
図1 関節リウマチを患っていた印象派の画家ルノアール 関節リウマチを発症した患者さんの多く方に手や足の変形が見られます。フランスの印象派の有名な画家であるルノアールは、48歳でリウマチを発症しました。晩年の写真(図1)を見ますと手が変形していることがわかります。このような手の変形はリウマチ患者さんに特徴的な変形で皆様の中にも似たような手をしている方がいらっしゃるのではないかと思います。今回は、リウマチ患者さんの手・足の特徴的な変形およびそのメカニズムを簡単に説明して、変形予防の手段、変形してしまった患者さんに対する変形矯正の手術法などをご紹介したいと思います。

関節リウマチに特徴的な手・足の変形

関節リウマチに特徴的な手・足の変形
関節リウマチに特徴的な手・足の変形として次の4つが挙げられると思います。(図2)スワンネック変形は、変形した指を横から観ると白鳥の首みたいになっているのでこう呼ばれます。
ボタン穴変形は、背側に突出した骨がボタンの穴のように腱に穴をあけるのでこう呼ばれます。尺側偏位とは手の指が流れるように小指側に傾く変形で、腕のある二本の骨のうち小指側の骨を尺骨と呼ぶためこのように呼ばれます。足の趾の変形では、外反母趾と槌趾変形です。槌趾変形とは金槌 で指を打ちつけたような変形で、指が曲がって背側に突出してきます。

関節変形のメカニズム

関節変形のメカニズム
どうしてこのような変形が起こるのでしょうか?これは変形の起こり方を簡単に説明した図です。(図3)指などの関節は曲げたり伸ばすことはできますが、小指側へ傾けたり背側へ曲げたりはできません。これは関節を靭帯などが安定化させているためです。関節に腫れが起こるのは滑膜という関節の中にある組織が腫れるからです。この状態が長く続くと関節を安定化していた靭帯なども伸びきってきます。真ん中の線は腱と言って筋肉が縮んだ力を伝える紐のようなものです。腱は一度伸びても筋肉が引っ張るのでまた緊張しますが、靭帯は伸びたままで関節を安定させられなくなります。骨の破壊とともにこのようなことが起こるため関節が変形していきます。

手・足の変形予防法

手・足の変形予防法
すでに説明したように関節が長期に腫れることが変形の原因ですから一番の予防は関節を腫れさせないことです。「腫れてはいるけど痛くないからこのままでよい。」このように考えている方が多いのではないでしょうか?痛くなくても腫れが続くと手・足の変形が起こってきます。まだ骨が破壊されておらず関節も変形していない早期の患者さんであれば、生物学的製剤の使用を含めて腫れている関節をなくすように薬物治療をしっかりと行うことが大切です。また薬物治療のみではどうしても腫れが引かない関節があれば、その関節だけ滑膜切除という手術を行うことを考えたら良いと思います。
さてすでに少しずつ変形を認めるようになった患者さんはどうすれば良いのでしょうか?しかりとした薬物治療を行うことはもちろんですが、変形の予防を兼ねて装具を使っていただくのがよいと思います。  図に示したのは母指の関節安定装具と尺側偏位予防用の夜間装具の例です。(図4)装具には既製のものからオーダーメイドまで種類も色々とあります。一人一人の生活や変形に合わせて使用することが大切ですので医師に相談して下さい。

手・足の変形矯正

10年前、20年前、さらにそれ以前に関節リウマチを発症した患者さん方もたくさんいらっしゃると思います。昔は痛みを少しでも楽にするような治療法しかなく、手・足の変形が進行してしまっている患者さんはどうしたら良いのか?進行してしまった変形を矯正するためには手術を受けていただくしかありません。リウマチ外科治療も薬物療法のようにかなり進歩してきました。工学の進歩による使用機種の改善、麻酔学の進歩による安全な麻酔、早期リハビリテーションによる早期社会復帰など手技的なもの以外にも大きく進歩しています。  いくつかの例をお示しします。手指では、母指の関節が不安定になりつまむことのできなくなった患者さんへ行った母指の関節固定術の例です。(図5)関節は固定され動かすことはできませんが、力を入れて物をつまむことができるようになります。下着の上げ下ろしが自分でできるようになったと喜ばれる手術です。  また尺側偏位をきたし人前に手を出すのが恥ずかしくなったという患者さんには、MP関節(手を握ったときに指先から3番目の関節です)の人工関節置換術(図6)などがあります。ある程度骨が残っている時期に行う必要があります。見た目は大変良くなるのですが、関節リウマチの炎症がしっかり治療されていないと再び破壊が進行します。

手・足の変形矯正

足首の変形が強くなりかかとをついて歩けなくなった患者さんへは、足関節固定術(図7)を行います。足関節の変形を矯正して、動かないように骨で固める方法です。人工関節置換術もありますが、膝関節や股関節の人工関節のように長く使うことができません。変形の強い患者さんには固定術のほうが安定した成績が得られます。
足趾の変形で普通の靴がはけない患者さんもおられると思います。背側に突き出した部位や足のそこにいわゆるタコができ痛くて踏み返しができないなどの悩みが出てきます。そのような患者さんへは、足趾形成術を行なってあげます。(図8)いろいろな方法がありますが、私は外反母趾を骨を切ることで矯正して母趾の関節だけ踏み返しができるよう残す方法を行なっています。
手や足の変形に対する手術法はこのほかにもたくさんあります。手術はその効果も絶大ですが失うものもあります。たとえば関節を固定する痛みがなくなり変形が矯正されますが、動かすことができなくなります。一人一人の患者さんの日常生活や日常動作を含めて、どのような手術法が適しているのかを考えなければなりません。受ける手術法の良い点・悪い点などをよく医師と相談して決めることが大切です。
最後になりますが、どんな治療を行うにしてもリウマチを薬物治療で抑え込むことが必要です。また状況によれば外科的治療を優先する場合もありますが、この場合も薬物治療が不必要になるわけではありません。これだけの内容では不明な点もあると思います。疑問に思われることはなんでも気軽におたずねしていただければと思います。

手・足の変形矯正
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